好き!→LINEブログの残骸(2021.12~2023.3)

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水戸その1〜水戸芸術館現代美術センター「ケアリング/マザーフッド:「母」から「他者」のケアを考える現代美術 ―いつ・どこで・だれに・だれが・なぜ・どのように?―」

 水戸芸術館現代美術センターで、「ケアリング/マザーフッド「母」から「他者」のケアを考える現代美術 ―いつ・どこで・だれに・だれが・なぜ・どのように?―」展を観た。
 展覧会を開催するにあたっての主催者挨拶や解説が一切ない。予算や時間がなくてそうなったのか、と思ったが、どうも戦略的にそうしているようなのだ。8室で展示があったのだが、いま、自分がどこにいるのも、何度もわからなくなって、監視員の方に質問した。
 いただいた資料とパンフレットを見れば、どんな美術展なのかはわかるのだが、何も見ないで歩き回ると本当に不思議な空間だった。
 ケアをテーマにした美術展というので、介護のあり方を問うものかと思って来館した。どうも様子が違うと、パンフレットを読み、展示を見ていると、どうも、出産、育児、家事といった女性たちが当たり前にしてきた仕事をテーマにしたアートのようだ。
 「ケアにかかわる活動は、誰もが必要とするからこそ、あたかも『誰か』の本質的な仕事のように自然化され、不可視化され、あるいは自己責任化されています」。 
 おそらく、「母」と呼ばれる人が、ひとりでこなして、誰も積極的にはアートのテーマにはしなかったテーマを初めて本気で扱った展覧会なのかもしれない。
 ちょっと本気で観なければ、と思った。
 ほとんどの時間を費やしたのは第3室。
 青木陵子三者面談で忘れてるMOTEBOOK」。
 この作家だけ、一枚別の資料があって、部屋の見取り図と作品解説がある。
1.はじまりはなんだったのか?
 3.(137億年前)「三者面談で忘れてるnotebook」
 24時間を0:00に合わせて
 1.「無意識ノート」
 いつも私たちの側にいる
 4.(137億年)「ビックバン」
 小さな一つの点から爆発した
 5.(45億5000万年前)「地球とテイア」
 ふたつの若い惑星が同じ軌道上を、異なる速度で偶然回り始めた
II.欲望、発展、絶滅
 24.(400年前)「オスマン帝国
 オスマン帝国ムラト3世は山地から5万本のヒヤシンスを集めて栽培させた
Ⅲ.失くしたものをおぎなうために
 37.(1年前)「1年前から永遠に続く片付け」
 抽象的思考を鍛えるための、整理整頓の中の整理整頓(%)
 41.(1ヶ月前)「三日月の夜」
 爆弾の雨が降っている
 オスマン帝国オスマン1世が見た予言的な夢から三日月はイスラム教の進歩等になった。
 西欧ではこのシンボルはあまり意味を持たない。最も身近なのは朝食にクロワッサンを食べている時である。
 46番は?
 46.(未来)「三権分立
 3つのテーマを線で結ぶと、完璧なバランスのとれた美しい正三角形が浮かび上がる。
 どの点にも偏りのない三角形をイメージしてほしい。
 その3つの点は立法、行政、司法。三角形は三権分立をあらわしている。
 さーっと見たら何も残りそうにない展示だったが、いま生きていることの深い意味、存在の不思議さなどを感じさせてくれた。
 この部屋で、エネルギーの大半を使ってしまい、後の展示はさーっと観たが、見るための用意ができたのか、スーッと心に染み込んできた。
 引いて撮ると、なんの展示もない部屋に見えるがーー。
 「わたしは思い出す」という仙台市の沿岸部に暮らすかおりさん(仮名)の育児日記かもとになった展示だ。
 本にもなっている。本の中身が、展示されている。面白い空間だった。

 第6室。碓井ゆい《要求と抵抗》

 石内都《幼き衣へ》
 石内の作品は最初の部屋にもあった。
 
 第7室。マリア・ファーラの作品。
 
 アート作品のような仮設の授乳室も設けられていた。
 人々が暮らす中で誰もが体験しながら、開かれていなかったケア。それを俯瞰し、深掘りし、つなげたアート展。現代美術ギャラリーならではの展覧会だった。