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「いま、原発回帰を許さない!」をテーマに、小出裕章氏が講演


 クレヨンハウスは1月22日、「原発とエネルギーを学ぶ朝の教室」を、JR武蔵境駅前「武蔵野プレイス」で開いた。「原発事故は終わっていない」などの著書がある元京都大学原子炉実験所助教で、原発反対運動を先導する小出裕章氏(元京都大学原子炉実験所助教)が、「いま、原発回帰を許さない」をテーマに講演した。
 岸田首相が原子力発電所の再稼働や運転延長、次世代型原発の建設など、原発回帰の方針を示す中、原発回帰がいかに危険な政策か、小出氏が力説した。
 「2011年3月11日の福島原発事故で発せられ原子力緊急事態宣言は、まだ解除できずにいて、未だに被災者は苦しんでいる。それにもかかわらず、岸田首相は原発回帰の方針を打ち出した」と小出氏が批判する。 
 小出氏は数字で福島原発事故の恐ろしさを示した。
 広島に投下された原爆で燃えたウランの重量は800g。たった800gで街が壊滅した。しかし、福島の原発事故で大気中にばら撒かれたセシウム137は、広島原爆の比ではないという。なんと、広島原爆の168発分だ。
 小出氏が、実験をしていた「放射線管理区域」の放射線量は1㎡あたり4万ベクレル。実験着や手についた汚れの数値はこれより下がらないと外に出られなかったという。
 ところが原発事故で住民を強制避難させた時の放射線量は1㎡あたり60万ベクレル。それ以下の汚染地の住民は放置した。
 感じられない、見えないだけで、多くの住民たちは放射能に汚染されていたという。
 福島の原発事故で溶け落ちた炉心(デプリと呼ばれる)は、今どこにどのような状態で存在しているかもわからないという。ロボットで探査しようとしてもICチップが影響を受けてロボットが制御できなくなるらしい。だから、「デプリの取り出しは、100年経ってもできないだろう」放射線管理区域の基準以上に汚染された土地は、100年経っても広大に残る」と小出氏。
 福島事故は全く終わっていないのに、事故を教訓とした原発抑制策が見直されようとしている。

 我々は事故による放射能の影響ばかりを考えるが、事故がなくても、原発稼働によって作られる死の灰はものすごい量になっているという。
 1966年東海原発が稼働してからこれまでに広島原爆の120万〜130万発分の膨大な死の灰を作ってしまった。

 そんな原発はもう増やさないという方針を大転換しようとしている岸田首相の意図は?
 GX(グリーントランスフォーメーション)という聞き慣れない言葉が、原発回帰の最大の理由だ。地球の温暖化を防ぐために二酸化炭素の放出を減らさねばならない、と主張する。 
 しかし、小出氏は「二酸化炭素は悪くて、死の灰は良いのか?」と声をあげる。
 二酸化炭素がなければ植物は生きられない。植物が生きられなければ、動物も生きられない。
 放射線は微量でも生命体に危険を及ぼす。

 それに、「本当に、二酸化炭素が温暖化の原因となっているのか」と小出氏は地球の長い歴史を振り返りながら、その常識を疑う。「本当に問わなければならないのは、エネルギーの大量消費。二酸化炭素だけに目を奪われてはいけない」。
 小出氏は「二酸化炭素が悪いというなら、原子力だけはやってはいけない」という。

 ウラン採掘、濃縮・加工、その段階で二酸化炭素を放出しているからだ。

 そして、「原発が破壊された時の被害は甚大」と心配する。北朝鮮のミサイル攻撃を心配するのなら、「まず原発を止める必要がある」。

 「岸田政権は、軍拡も進める国家安全保障戦略などを改訂し、防衛予算を倍増する考えを示した。米軍の下で戦争をすることができる国にしようとしている」と小出氏。
 原子力への回帰は、実軍拡とつながるという。

 日本は原爆を作ろうと思えば、1年以内に作れる能力があるという。そのためには原発を稼働しておくことが必要なのだ。
 「核を持つ力を失うから、原発から撤退してはいけない」というのが自民党議員の本音と小出氏は分析する。


 「騙したのは政府だから我々に責任はない、と国民は言ってはいけない。そうから考えたら何度も騙される
国民にも責任がある」と小出氏は最後に語った。
 
 真実が見えないまま、原発回帰を容認し、知らず知らずのうちに原発事故と戦争に巻き込まれ、我々は滅びるかもしれないーー素直にそう感じた。
 
  もっと勉強しなければいけないし、正しい議論ができる言論空間を育てることも必要だ。
 とても刺激を受けた70分だった。