好き!→LINEブログの残骸(2021.12~2023.3)

僕の好きなもの、好きなこと。好きってなんだ?

映画「ベイビー・ブローカー」(ココログ2022.7.6)


 是枝裕和監督の「ベイビー・ブローカー」を観た。

 この映画をすごく観たいと思ったのは6月29日のNHKクローズアップ現代で、是枝監督のインタビューを聞いたのがきっかけだ。

 「ベイビー・ブローカー」は、監督以外、ほぼ韓国人の俳優とスタッフで作り上げた。

 是枝監督は言う。「良くも悪くも慣れ親しんでいるチームの中だと、あえて言語化しないでも済んでしまうことってあるじゃないですか」「もう一度こういうふうにきちんと言葉にして伝えないといけないっていう環境を経験するのは、演出家としては良い訓練だなとは思います」「この人がどう生まれてどう育ってというのは、実は普段はあまりしないのですが、あっても役者には渡さないのですが、今回は結構細かく書いて、台本に現れていない部分も含めて渡した方がいいと思ったので、そこは言葉にして渡しました」。

 そして、「ベイビー・ブローカー」は、見事、第75回カンヌ国際映画祭コンペティション部門で、主演のソン・ガンホが最優秀男優賞を受賞。コンペティション部門の出品作のなかから「人間の内面を豊かに描いた作品」に贈られるエキュメニカル審査員賞も受賞した。
 期待通りの映画だった。
 まず、役者の演技が、とても生きる演出が目を引いた。
 最近はロケを減らすために、外のシーンもクロマキー合成を使ってスタジオで撮影することも多いが、「ベイビー・ブローカー」では釜山からソウルまで、役者が実際に車や列車で移動。最後のシーンを先に撮影するようなことはせず、ストーリーの進行とロケの順番を一致させたので、だんだん、役者たちの親密度も高まったようだ。劇場で芝居を観ているような空間が心地よかった。
 お金目当てのブローカーが、いつのまにか赤ん坊の幸せを考えるようになる。ちょっと間違えると、ドタバタ喜劇になりそうなストーリーだが、母親役のイ・ジウン、ブローカーのソン・ガンホが、シリアスさも保ってくれた。
 生まれてきたことに感謝するシーンは、当初の脚本にはなかったというが、この映画のテーマがストレートに伝わった場面だ。命という重いテーマが底流に流れ、役者が常にそれを意識して演技したことが、この映画をスケールの大きな映画にしたのだと思う。